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気候変動と科学と社会

〈論文メモ〉Weart(2013)Rise of interdisciplinary research on climate

  • Spencer Weart (2013) Rise of interdisciplinary research on climate. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America Volume 110, Issue SUPPL. 1, 3657-3664

Meteorology and Geophysics (1940s to 1950s)
Fragmentation
Confronting Climate Change (1960s to 1970s)
Means of Communication (1970s to 1980s)
Cooperation and Integration (1990s to 2000s)

 

ながらく気候学は地理学の一分野で、物理的な法則を探求する科学とはほとんど無縁的な立ち位置にいた。気候は安定なものだという信念が支配的だった。氷河期のサイクルに関する関心はあったが、気候学コミュニティのなかで中心的というわけではなかった。

第2次世界大戦下、気象学は戦争に動員されたことにより、学問として急速な発展を見た。ブライソンとかローレンツとかは戦時中気象学者として働いてその後のキャリアを決めた。シカゴ大学のロスビーのグループは中心的な役割を果たした。

戦後も冷戦とか核戦争の危機の下で、相変わらず気象学の重視は続いた。いっぽう、地球物理学という枠組みができ始めた。気候変動の物理的側面に関心を持った研究者が現れ始めたが、それぞれ分野がバラバラで、話し合うような場も少なかった。論文誌『Tellus』はその数少ない場だった。

スベルドラップはいろんな分野で活躍したけど、たぶん彼が分野をまたいで活躍した地球物理学の最後の世代だっただろう。地球物理は細分化していった。あいかわらず、気候研究に関してはバラバラな状態だった。各ディシプリンがまだ強固な感じ。

1960年代は気候に関する関心が高まって、国際的な協力関係の形成が進んだ。1965年のボールダー会議とか。70年代にかけては、いろんな分野の間でのつながりが増えていった。1970年代は地球科学に全体論的な考えが広がりつつあった。生態学とかもでてきた。

IGBPなどのプログラムも始まった1980年代には「地球システム科学」が誕生した。生物学とか固体地球科学とかのひととの共同研究を含む国際的な研究プログラムが進められた。

1990年代から政策的な関心も広まった。IPCCができたことで、気候に関する研究のネットワークの基盤が強化された。インターネットの発達はこのような研究のネットワークの強化の助けになるだろう。

 

〈コメント〉

インターディシプリンとしての気候研究の発達を概観した論文。学術誌における論文の発表数などを使った書誌計量学的手法を考察に用いている点に特色がある。