〈メモ〉IPCCの2つの不確実性メトリクス
「可能性はゼロではない」といった表現が混乱を招く問題、IPCC第5次報告書が非常に良い統一基準を作っていたので、これを参考にすると良いと思った。可能性が1%未満の場合は「ほぼあり得ない」で統一してる。 pic.twitter.com/y8IPfrEFXm
— 大貫剛 (@ohnuki_tsuyoshi) November 28, 2016
この件にはあまり関係ないかもしれないけど、IPCCの歴史のなかではかなり議論があって、IPCCの不確実性ガイダンス(2010)では、そもそもこの「可能性」メトリクスを使うのが適切と考えられる場合についてのみこれらの語彙を使うよう強く勧められているという点は注意が必要かも RT
— chlochro (@hakkirikuro) 2016年11月28日
2010年のIAC勧告は、IPCC評価報告書で使用する不確実性を表現する語彙は基本的には質的なものを統一的に採用すべきとしていて、適切な場合にのみ確率を用いた定量的な表現を使うべきとした。
— chlochro (@hakkirikuro) 2016年11月28日
IPCCガイダンス(2010)もIAC勧告を踏まえているが、同様の議論はすでにガイダンス(2005)作成時にもなされている。AR5では、不確実性を表現する際、基本的にはより質的な「確信度」メトリクスを用い、適切な場合にのみ「可能性」メトリクスを使うということになった
— chlochro (@hakkirikuro) 2016年11月28日
やっぱり、IPCC評価報告書における不確実性の取り扱いの工夫はむしろ、ある知見の正しさについての専門家の主観的な判断をどう伝えるのか、ということを軸として発展してきたものと理解すべきと思う
— chlochro (@hakkirikuro) 2016年12月7日
IPCCでは「確信度」と呼ばれるスケールがこれにあたるのだが、興味深いことに、TARガイダンス(2000)では、情報の定量性がもつ政策上の重要性を重視して、確信度をベイズ的な主観確率として提示することを提案していた
— chlochro (@hakkirikuro) 2016年12月7日
しかし、その後のIPCCガイダンス(2005, 2010)の流れはむしろ、「確信度」を定量的な(あるいは数値的な)ものから質的なものへと変えていく方向にある
— chlochro (@hakkirikuro) 2016年12月7日
2016年読んだ本から10冊
・2016年読んだ本から10冊
- ポパーとウィトゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い一〇分間の大激論の謎/ ちくま学芸文庫 (2016)
- 街の人生/ 勁草書房 (2014)
- リヴァイアサンと空気ポンプ――ホッブズ、ボイル、実験的生活/ 名古屋大学出版会 (2016)
- プロパテント政策と大学/ 世界思想社 (2007)
- 見えないものをみる――ナノワールドと量子力学/ 東京大学出版会 (2008)
- 医学の歴史/ 丸善出版 (2015)
- メディアは環境問題をどう伝えきてきたのか――公害・地球温暖化・生物多様性/ ミネルヴァ書房 (2015)
- きのう何食べた?(1)-(11)/ 講談社 (2007-2015)
- 職業としての小説家/ 新潮文庫 (2016)
- やがて哀しき外国語/ 講談社文庫 (1997)
短評。1.は2人の著名な哲学者の評伝を、有名な事件の謎解きという形で構成したもの。評伝としてはもちろん、哲学史としても、ナチス・ユダヤ問題についての読み物としても優れており、ページを繰る手が止まらなかった。2.は社会学者による生活史の記述。名のない人の人生が豊かに語られており、ずっと聞いていたいと思わせる。3.は今年邦訳が出た科学史の最重要文献。さすがに手強いが、研究上のインスピレーションを各所で与えてくれる、含蓄に富む1冊。4.の主題は戦後アメリカの知財政策史であるが、科学技術政策史とも読める。非常によくまとまっており、20世紀科学技術史の参考文献となる。5.は量子力学を実験的なアプローチから説明するもの。題材として表面物理関係が多かったという点で興味を引いたが、理学概説書としてはまれなほど読み物として優れている。6.はOxford Univ Press Very Short Introductionsの1冊の邦訳。医学史全体の中から、大胆な分類が採用され、本書の構成自体が科学史のアプローチとして興味深い。7.は地球環境問題に関するメディア研究についての専門書。優れた論文集であり、この分野の最近の研究動向を把握するのに有用。8.はいわゆる「料理マンガ」のなかの人気シリーズ。安定感抜群で読んでいて心地よいが、ところどころ読者に深い思考を促す場面もある。9.と10.はいずれも作家・村上春樹によるエッセイ集。著者の小説にはあまり明るくないが、すくなくとも優れたエッセイの書き手として深く信頼している。
〈メモ〉カリフォルニア大学出版部e-Bookコレクション
先日Twitterで、カリフォルニア大学出版部[Univeirsity of California Press]のe-Bookコレクション(1982-2004)のうち一部が公開されていることを知った。
カリフォルニア大学出版局がe-text化した学術書(1982-2004)2000点のうち700点を一般公開。DLできないのが残念ではあるが、絶版で入手困難なものが多数含まれている。ありがたい。https://t.co/wp5VadNhVw
— 逆卷 しとね (@_pilate) March 24, 2016
公開されているe-Bookのなかで自分の興味を引いたものをメモとしてまとめておく。
[Environmental Studies]
- Knox, Joseph B., and Ann Foley Scheuring, (eds.) Global Climate Change and California: Potential Impacts and Responses. Berkeley: University of California Press, c1991 1991. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/ft8r29p2m6/
- Somerville, Richard C. J. The Forgiving Air: Understanding Environmental Change. Berkeley, Calif: University of California Press, 1998, c1996 1998. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/ft6290079d/
[Sociology]
- Rosenzweig, Robert M. The Research Universities and Their Patrons. Berkeley: University of California Press, c1982. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/ft4489n90n/
[History and Philosophy of Science]
- Epstein, Steven. Impure Science: AIDS, Activism, and the Politics of Knowledge. Berkeley: University of California Press, c1996 1996. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/ft1s20045x/
- Frangsmyr, Tore, J. L. Heilbron, and Robin E. Rider, (eds.) The Quantifying Spirit in the Eighteenth Century. Berkeley: University of California Press, c1990 1990. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/ft6d5nb455/
- Hamlin, Christopher. A Science of Impurity: Water Analysis in Nineteenth Century Britain. Berkeley: University of California Press, c1990 1990. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/ft667nb43t/
- Stroup, Alice. A Company of Scientists: Botany, Patronage, and Community at the Seventeenth-Century Parisian Royal Academy of Sciences. Berkeley: University of California Press, 1990. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/ft587006gh/
[海洋科学の歴史に関するもの]
- Raitt, Helen. Exploring the Deep Pacific. New york: Norton, [1956] 1956. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/kt6b69q3vg/
- Raitt, Hellen and Moulton, Beatrice. Scripps Institution of Oceanography; first fifty years. Los Angeles: W. Ritchie Press, [1967] 1967. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/kt2b69q0kn/
- Shor, Elizabeth Noble. Scripps Institution of Oceanography: Probing the Oceans 1936 to 1976. San Diego, Calif: Tofua Press, 1978. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/kt109nc2cj/
- Sargent, Peter. The sea acorn: Scripps Institution of Oceanography: the people and the place, 1936-1942: with prologue and epilogue. San Diego, CA: Sargent, c1979 1979. http://ark.cdlib.org/ark:/13030/kt4f59q1gv/